益子直美さん、監督が怒ってはいけない大会を開催。自分自身の違和感を社会に発信

 スポーツの練習や試合を通して指導者に怒られたことは、スポーツ経験者ならば一度は経験したことがあるのではないでしょうか。

 その指導方法に違和感を感じ、発信と活動を続けている益子直美さんの取り組みを紹介します。

 バレーボール元女子日本代表の益子直美さんは2021年4月、一般社団法人監督が怒ってはいけない大会を設立しました。2015年から開催されており、現在は日本各地で大会が開かれています。

 益子直美さんは、中学生からバレーボールを始め、高校時代は共栄学園のエースとして大活躍。高校3年の秋に全日本代表入りを果たしました。

 1985年には世界ジュニア代表となり新人賞を受賞。その後、新生「イトーヨーカドー」チームに入り、エースとして活躍されました。

 引退後の現在は、バレーボールで培ったスポーツマインドを生かして、スポーツキャスターとしてテレビ・ラジオ・雑誌などで活躍。NHK総合「トップランナー」の司会も務めたこともあります。

 益子さんがバレー選手として活躍していた時代では、怒る指導が当たり前でした。益子さんは社会人になってから「バレーをもっと楽しめ!」と言われることが多かったそうです。

 しかし、スポーツが楽しいと感じたことはなく、試合が怖いため、引退することが目標となっていたそう。引退後に、怒る指導は考える機会を失い、心の成長を阻害すると考え、この大会の開催に至ったとのことです。

 監督が怒ってはいけない大会では、試合の勝ち負けではなく「子どもたちが楽しくのびのびとプレーすること」を重視します。同時に、指導者に対しては大会を通して機会に自分の指導の仕方を見直すことを促します。

 子どもたちには、監督やコーチが怒鳴ったり、怒ったりしたら、大会運営者に報告に来てねと伝えてあり、子どもが報告に来たら、指導者を指導するという仕組みとなっています。

 監督が怒ってはいけない大会における3つの理念は、

  1. 参加する子供たちが最大限に楽しむこと
  2. 監督(監督、コーチ、保護者)が怒らないこと
  3. 子どもたちも監督もチャレンジすること。

 指導者が怒らないというルールにより、子供たちはのびのびとプレーを行うことができます。いつもならアタックを打たない場面でも攻める姿勢が出たり、思い切って飛び込むなどの積極的なプレーを行うこともあるそうです。

 一方で、指導者側からは、怒ったつもりはない、怒っているうちに入らない、等の自分では怒っている意識がないというコメントが出ることが多いとのことです。

 大会を通して指導を受ける側とする側のギャップが明確になるため、指導者は怒る以外の指導方法を行う必要性を肌で感じることができます。

 この大会はバレーボール以外のスポーツにも普及し始めており、サッカー等でも監督が怒ってはいけない大会が開催されています。

 また、日本財団が支援する社会課題解決の輪を広げるためのプラットフォーム「HEROs」のHEROs AWARD 2022でも表彰されました。

 アスリート時代に経験した違和感は、社会課題に通じるものかもしれません。益子さんが始めたこの取り組みは多くの人々に受け入れられつつあり、子供が楽しくスポーツをするきっかけとなっています。

Menu

©2023 Neural Sports. All rights reserved