大坂なおみ選手、人種差別へNo。スポーツ選手の社会課題に対する影響力は大きい

 「スポーツに政治を持ち込むな」。アスリートが社会課題などに関する発言や行動に対して、批判をする際によく耳にする言葉です。アスリートは政治や社会課題について発信することは悪なのでしょうか?

 テニスプレーヤーの大坂なおみ選手は、2020年の全米オープンで2年ぶり2回目の優勝を成し遂げました。試合の活躍への注目とは別に、人権差別問題に対する行動が大きな話題を呼んだためご紹介します。

 大坂選手は1回戦から入場時等に人種差別による黒人被害者の名前を入れた黒色のマスクを着けて、人種差別撤廃へのメッセージを発信し続けました。

 ブラック・ライブズ・マター(BLM)と呼ばれる、アフリカ系アメリカ人に対する警察の残虐行為のためにアメリカで始まった人種差別への抗議運動に賛同し、今回の活動を実行しました。

 BLMは2012年2月に、フロリダ州サンフォードでアフリカ系アメリカ人の高校生を白人の自警団員が射殺した事件をきっかけにSNS上で拡散されました。

 2020年5月には米ミネソタ州で、アフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイドさんが白人の警察官に偽ドル札の使用容疑により手錠をかけられた後、首を強く圧迫され死亡した事件を受け、再び全米に広がりました。

 ハイチ系米国人を父、日本人を母に持ち、日本国籍の大坂選手は、一貫して黒人差別問題に対し、差別撤廃を求めるメッセージを打ち出し、アクションを実行しています。その度に、日本や米国でも「スポーツに政治を持ち込むな」等の批判を受けてきました

 2020年6月には、「スポーツに政治を持ち込むな」という批判に対し、ツイッター上で「第一にこれは人権問題」「第二に、なぜあなたは私以上に話す権利があるのか?」と述べ、スポーツ選手が人権問題について発言し続けていく姿勢を表現しました。

 アスリートが社会課題に対して明確なメッセージを発表することに対して批判が集まることも多いです。しかし、大坂選手の人権問題に関する発信は、8.6万以上のいいねを集め、好意的なコメントが寄せられていることも事実です。アスリートには多くの人々の心を動かす素晴らしいパワーで溢れています。


 また、大坂選手は、人権問題に関する活動だけではなく、多くの社会課題に関する活動を行っています。2020年8月には、女子のエンパワメントを目的とする「プレー・アカデミー with 大坂なおみ」を大坂選手、ナイキ、スポーツを通して社会貢献を行う団体のローレウス・スポーツ・フォー・グッド財団と設立しました。

 このアカデミーは、ジェンダーインクルーシブ(※)な研修を受けたコーチによる指導や、楽しくポジティブな遊びの体験を提供しています。

 日本の女子は15歳になるまでに、男子と比べて2倍の割合でスポーツから遠ざかり、スポーツによる恩恵を受けることができていないないということです。現在、日本、ハイチ、ロサンゼルスで活動を行っています。

※インクルーシブ:あらゆる人を排除せず受け入れること

 その他にも、2021年8月14日にハイチで発生した大規模な地震を受けて、同時期に開催されるトーナメントの賞金をハイチに寄付することを発表しています。

 2021年には自身のスキンケアブランド「KINLO」を、2022年にはアスリートを支援するマネジメント会社「EVOLVE」を設立し、地球環境やアスリートへの支援も行っています。

 大坂なおみ選手の社会課題に対する活動を紹介しました。日本ではアスリートが社会課題に対して発信する、取り組む姿に対して懐疑的な意見が多々あります。しかし、アスリートの真摯な意見や行動は確実に社会の人々の心を動かしています。

 

Menu

©2023 Neural Sports. All rights reserved